神経学に基づくリハビリの知識
最近Progress in Brain Reserch,Vol.143 CHAPTER 25 "Cortical and brainstem control of locomotion"Trevor Drew, Stephen Prentice and Benedicte Schepens から講義を持たせてもらいました。 Clinical Neuroscience Vol.27 特集Motor system-What's classic and what's new? の高草木先生の網様体脊髄路に関する最新知見も交えてCPGやリーチのニューロンネットワークに皮質がどう関わっているかという話をさせてもらいましたが、まとめていて自分自身にも勉強になる部分がたくさんありました。
その一つが脳幹網様体は姿勢コントロールの筋緊張に関わる役割を果たしていることは周知の事実ですが、(主にPPN/脚橋被蓋核からの下行路)脳幹網様体は霊長類では6野(前運動野・補足運動野)からの入力を非常に多く受けます。すなわち随意運動との関係で言えば、例えば「あのコップを取ろう」と企図することが6野から運動野(4野)と脳幹網様体に信号を送り、運動野から皮質脊髄路を通じて手先を動かす命令が脊髄に行くのと同時進行的に、あるいは先行して脳幹網様体によって姿勢コントロールが準備されると言うことになるのです。
このエビデンスからすると療法士が他動的に手をコップに誘導するだけでは姿勢コントロールに必要な情報にはならず、対象者がコップをよく見て「取ろう」と思うことが重要になるわけです。
ちなみにこの脳幹網様体は青班核ニューロンからの伝達物質に影響を受けますが、青班核ニューロンは報酬に関わる事によく反応すると言われています。すなわち「うまくいった」とか、快適であるという結果につながることがまた姿勢コントロールに影響を与えるのです。
<解説>
と難しいことを書きましたが、要するにどんな達人がリハビリしても脳卒中をもたれた方自身が「あれを取ろう!」と思って手を伸ばすリハビリをしないと脳は準備されないと言うことですね。そして「よしできた!」と思えるような場面でリハビリをする環境を作れることが重要です。隣の人と無駄話をしながらリハビリをする療法士さんは神経科学を無視していることになります。
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コメント
ご無沙汰しています。
難しいことは分かりませんが、麻痺の手足を動くようにしたいときには、「歩こう」、「ペットボトルを握ろう」などと、自分の意志で、足を動かそうとしたり手を動かそうとすることが大切だと思っていました。
出来れば、感動しますし、次の動作を可能にする意欲も出てきます。
リハビリとは、療法士にしてもらうのではなく、自分の意志で行うこと言うのが私の持論でした。
良いお話をお聞きしました。
ありがとう御座いました。
投稿: マサおじさん | 2009年12月 3日 (木) 13時12分
はじめまして。
一つ質問させていただきます。
神経科学や神経生理学的背景を考慮して評価・治療することに関しては反論するきはありません。
しかしながら、橋網様体脊髄路等の評価そのもの、もしくは橋自体の評価等は実際はいかがなものなのでしょうか?
投稿: あらま | 2009年12月28日 (月) 22時23分
>マサおじさん
療法士は少なくとも自分の知識や経験の中でもっとも良い手段を使って脳障害を有された方々の治療にあたっていると私は信じています。ただ、自分たちのやっていることの正当性を主張したいばかりに他動的な治療法を押しつけてしまうことがあります。幸いボバースコンセプトは概念なので対象者の反応や声に耳を傾けて、そして神経学の進歩に門を開いて柔軟に発展する要素を持ち続けてきたので70年という長い間対象者の方々と共に歩んで来られた・・と思っています。これからも貴重なご意見をお聞かせいただければ幸いです。良いお年を!
投稿: 伊藤克浩 | 2009年12月29日 (火) 23時36分
>あらまさん
コメントはあくまでも私の考えです。治療に結びつけてエビデンスがあるものだ、と主張しているわけではありません。2009番の脳卒中ガイドラインを見て頂ければ一目瞭然ですがエビデンスがある治療だけを選択していては先に進めない事実があります。「橋網様体脊髄路等の評価そのもの、もしくは橋自体の評価」をセラピストができるかどうかわかりませんが両側性であることによる回復の可能性や、霊長類では6野からの影響が多きいことは対象者の方の治療を他動的な治療から解放する理論的背景になる可能性がある裏付けであると思っています。そのことが傷害受容を遅らせる・・と主張される方もいますが私は対象者の方々の潜在能力を統計の数字や政治的な治療期間(例えば厚労省が決めた回復期というくくり)に当てはめることを好んでいません。
ところで「橋網様体脊髄路等の評価そのもの、もしくは橋自体の評価」とはニューロンの電位等の事をおっしゃられているのでしょうか?(^^;アセアセ
投稿: 伊藤克浩 | 2009年12月29日 (火) 23時49分
失礼しました。(^^;アセアセ 脳卒中治療ガイドラインのくだりは「2009年版」の間違いです。訂正します。
投稿: 伊藤克浩 | 2009年12月29日 (火) 23時52分
電位のことのみではありません。
橋網様体脊髄路や橋の評価を行う必要は十分にあると考えています。ここですべてを述べることはできませんが、少なくとも伝導路なので通り道という概念が必要です。脈管系と同じで、筋が収縮していれば動脈の流れが悪くなるのと一緒と思われます。つまり、橋網様体脊髄路においてもニューロンが切り替わるまでに通り道が阻害されていないという評価を行うということになります。また橋自体の評価は橋の機能そのものなので特に従来と何ら変わらないと思います。
投稿: あらま | 2009年12月30日 (水) 07時11分
他動的に手をコップに誘導するだけでは姿勢コントロールに必要な情報にはならず、対象者がコップをよく見て「取ろう」と思うことが重要になるわけです。
とありますが、セラピストはどういったことを手助けしていけばよいのでしょうか?脳幹網様体は体幹筋に影響していますが、どのタイミングまたはどのようなハンドリングをしていけばよいのでしょうか?
投稿: おぐ | 2010年1月13日 (水) 21時05分
私は片麻痺で右半身が全く動きません。食事はこぼすし、飲み物はストローなしでは飲めません。
段々麻痺もエスカレートして左も段々動かなくなっています。握力は右が0で左が1です。
私まだ10歳です。このまま車椅子か寝たきりなんですか
投稿: ひなぴょん | 2010年3月13日 (土) 23時38分
おぐさん。遅くなってすみません。
症例ごとに失敗の理由を明確にする必要がありますが、たとえば座って前にある対象物にリーチする場合を例にとりますと、姿勢調整がミスにならないように下肢の状態を整えて、ご本人が「取ろう」と思われたときに両側体幹や麻痺側股関節のスイッチが入りやすくなりますのでそれを検知してからリーチを誘導する・・という事になりますね。他動的に誘導するとこのスイッチが入りにくいという意味です。
投稿: 伊藤克浩 | 2010年3月15日 (月) 14時30分
ひなぴょんさん。
状況がよくわかりませんが脳性麻痺をお持ちなのでしょうか?悪化されているとのこと・・どこかでリハビリを受けられていますか?
投稿: 伊藤克浩 | 2010年3月15日 (月) 14時32分
2007.3.10
右脳被殻出血で倒れ、現在左片麻痺の47歳男性です。
いくら、リハビリを、頑張ってきても、むりでした。
本人のやる気が!ぜんていですが・・・
足には、装具、杖がなければ・・屋外へは、でれませんん。
仕事も、昨年解雇!運転免許も、効力が、ありません
ips細胞治療で、鹿、望みは、ないのでしょうか?
投稿: 治田 得三 | 2011年12月11日 (日) 14時07分
治田さん。コメント遅くなってすみません。(^^;アセアセ
私と同じ年齢ですね。片麻痺と付き合って行くには時間も必要です。症状のことで困ったことがあれば何かヒントを考えられるかもしれませんので教えてもらえますか?
投稿: 伊藤克浩 | 2011年12月22日 (木) 22時14分
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投稿: ルイヴィトンバッグ | 2020年5月23日 (土) 23時37分