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2009年11月 6日 (金)

神経学に基づくリハビリの知識

最近Progress in Brain Reserch,Vol.143 CHAPTER 25 "Cortical and brainstem control of locomotion"Trevor Drew, Stephen Prentice and Benedicte Schepens から講義を持たせてもらいました。 Clinical Neuroscience Vol.27 特集Motor system-What's classic and what's new? の高草木先生の網様体脊髄路に関する最新知見も交えてCPGやリーチのニューロンネットワークに皮質がどう関わっているかという話をさせてもらいましたが、まとめていて自分自身にも勉強になる部分がたくさんありました。

 その一つが脳幹網様体は姿勢コントロールの筋緊張に関わる役割を果たしていることは周知の事実ですが、(主にPPN/脚橋被蓋核からの下行路)脳幹網様体は霊長類では6野(前運動野・補足運動野)からの入力を非常に多く受けます。すなわち随意運動との関係で言えば、例えば「あのコップを取ろう」と企図することが6野から運動野(4野)と脳幹網様体に信号を送り、運動野から皮質脊髄路を通じて手先を動かす命令が脊髄に行くのと同時進行的に、あるいは先行して脳幹網様体によって姿勢コントロールが準備されると言うことになるのです。

 このエビデンスからすると療法士が他動的に手をコップに誘導するだけでは姿勢コントロールに必要な情報にはならず、対象者がコップをよく見て「取ろう」と思うことが重要になるわけです。

 ちなみにこの脳幹網様体は青班核ニューロンからの伝達物質に影響を受けますが、青班核ニューロンは報酬に関わる事によく反応すると言われています。すなわち「うまくいった」とか、快適であるという結果につながることがまた姿勢コントロールに影響を与えるのです。

<解説>

 と難しいことを書きましたが、要するにどんな達人がリハビリしても脳卒中をもたれた方自身が「あれを取ろう!」と思って手を伸ばすリハビリをしないと脳は準備されないと言うことですね。そして「よしできた!」と思えるような場面でリハビリをする環境を作れることが重要です。隣の人と無駄話をしながらリハビリをする療法士さんは神経科学を無視していることになります。

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