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2005年7月12日 (火)

◆片麻痺を持たれた方の利き手交換(書字)について

 右利きの方が右片麻痺を持たれると書字動作が障害されます。右手の回復のすすみ具合によっては左手で字を書けるようになる為に「利き手交換」に取り組まなければならなくなりますね。

 もともと書いたことのない左手で字を書くことは大変です。リハビリを病院で受けたことのある人は作業療法士室で何時間も練習したかもしれません。

 もちろん何度も練習することも確かに大切ですが、ここでは書字動作の「こつ」について触れておきます。

 書字動作のこつ(知覚的操作の主役)はペン先(えんぴつの先)からの情報です。ですから最も動いて運動をリードするのはペン先であり、ボールペンのボールが転がる(フェルトペンならフェルトの部分の弾性を感じる・えんぴつなら芯が削れていく)感覚が主役となります。

 慣れない動作で手首が固定されたり、手のひらの中が固くなったりするとこの感覚が失われてしまいます。この感覚を利き手ではない方で覚え直すにはまず手のひらと指にゆとりを持つことが大切です。力ずくで握ったり習字のように腕全体で書いたりせずにペン先の感覚を捉える練習から始めると良いでしょう。

 具体的にはまず肩の力を抜きます。操作空間(書く場所)を体の正面に設定します。手首の小指側の部分をテーブル(紙の上)に置き、ペンを握りこまないで三指つまみ(親指・人差し指・中指の先)でもちます。力を抜いて手のひらの中にピンポン球が入るくらいの空間をつくります。その状態で中心から渦巻きをできるだけ大きくしていくように書いていきます。手全体の動きではなくてペン先の動きがリードするように親指・人差し指・中指の曲げ伸ばしを主体に均等な渦巻きを書いていきます。(最初は手首の小指側がついた場所から動かないようにします)

 同様に縦線・横線・四角形なども書けるように練習していきます。実際の字を書く際もペン先からの抵抗感を感じながら親指・人差し指・中指の動きで書けるように練習します。小指と薬指は安定のために軽く握っておくと良いかもしれません。

※麻痺した側で練習するときも要領は同じです。筆圧が薄いとか「口」という字の角がしっかり書けないときには多くの人が親指側を握りこんでいます。外に張り出した肘の力を抜いて軽く折りたたみもう一度上記の方法でトライしてみて下さい。

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コメント

2年前に右被殻出血で左片麻痺になった者です。(現在、なんとか麻痺手の左手で書字練習できるまで回復しています。また、もともと左利きです)そもそも、文字、特に漢字というのは、左手では書きにくいものです。実際、右手と左手でペンを持ち比べてみてください、右手と左手では、ペンの傾きが左右逆になるのがわかると思います。
横線を左手で書くだけでも、結構熟練を要しますし、右下への払いや、一画一画の止めなどの形を整えるのは、至難の業です。
でも、対策はあります。それは、ペンの持ち方を書道(毛筆)でいうところの全鈎法という、全ての指を使う持ち方(毛筆では太い筆を持つときに使います。)にする方法です。普通は単鈎法という、親指以外の4本の指のうち、人さし指だけをペン(筆)の上にかける持ち方ですが、これは、中指の背と人さし指で挟むために、ペン先が掌の側を向いてしまい、角度が右手と左手で逆になってしまいますが、全鈎法という持ち方では、親指と他の4本の指の全てつまむのででペン先は小指側を向くため、右手と左手の差がでにくいのです。筆の持ち方の詳細については、適当な毛筆書道の教科書(私がこの持ち方を知ったのは段を取ってからなので、かなり上級向けかもしれません)に載っていると思います。

投稿: KK | 2005年7月13日 (水) 22時55分

貴重なご意見ありがとうございます。こういった形で生かされるアイデアが当事者の方々から出てくると情報データベースとして価値が出てきますよね。麻痺側上肢で筆の弾性を操作するのは難しいですよね。肩周囲にかなり安定性が要求されます。
 

投稿: 伊藤克浩 | 2005年7月14日 (木) 08時32分

支援学校の教員をしています。今年、小学部の1年生の担任となりました。先日リハ見学をさせていただき、ありがとうございました。他の1年生で右麻痺のお子さんがおります。ひらがなや数字が読めますので、書字にも取り組もうかと思っていますが、鉛筆の持ち方と、書き方で、疑問をもちまして、このサイトに出会いました。線や円、点は書くのですが、点結びをさせたところ、うまく書くことができません。これから書字を指導していこうとする子供の場合、左手でどのように鉛筆を持たせたらよいのか教えていただきたいのです。左利きの人の場合、持ち方は普通ですが、手首を屈曲させて紙の上方向に掌がくるようにして書いている人が多いように感じます。毛筆の持ち方のコメントを読ませていただき、なるほど・・・とも思いましたが、左手でかくスタンダード?こうしたら一般的には良い、というべきものがあるのでしょうか。この子は生まれつきの障害ですので、右手で書いた経験はありません。

投稿: M.H | 2009年5月 6日 (水) 17時27分

持ち方から先に決めないで鉛筆の先の反力を良く検知できる持ち方を探すことがよいとだと思います。
これまでも書いてきましたが、道具は手の延長でして、どう使うか・・よりどう感じ取って変化させられるかがポイントになります。ただ、点結びだけ難しいのであれば参照枠や資格の問題があるかもしれません。点の位置で違いがありますか?

投稿: 伊藤克浩 | 2009年5月 8日 (金) 10時22分

早速のお返事ありがとうございました。書き込み遅れてすみません。どう感じ取って変化させられるか、ですね。私は、左手ということにこだわっていたように感じます。言葉は3語連鎖くらいあるのに、絵の方はクロスしない長い線と、丸、点がかけるくらいなので、発達にアンバランスさがあると思っています。視覚、空間認知の問題、器用さの問題があるように思えてきました。これから、気をつけて見ていきたいと思います。

それから、片手でのスボンの上げ方、シャツの着方を知りたいのですが、どうしたらよいでしょうか?脱ぐことはできます。右手はだらりとしていて、手を水平より高く上げません。カード1枚くらいなら持ちます。どうしても食べたいものを開けるときとか、本人が本当に必要だと思う時にしか使いません。

投稿: M.H | 2009年5月19日 (火) 21時57分

片手でのスボンの上げ方、シャツの着方ですが、一番の基本は手の動きではなく、着させられる側の腰や体の動きが重要です。布やズボンの張りを感じながらそれに合わせていけるだけのバランスと可動性が必要だおと思います。

投稿: 伊藤克浩 | 2009年10月31日 (土) 02時54分

右麻痺になって3年半。右手で字を書きたいと思い、奮闘しています。まだ手首に力がはいります。線もまだふらついてます。数量稽古でがんばってみます。

投稿: 中村 昇 | 2013年4月 7日 (日) 00時25分

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