2012年8月 1日 (水)

ココログ最後の更新「折れない心」を持って・・

 今日、10台のヘルニア術後の青年が3ヶ月ぶりに松葉で歩けました。

 彼は先天異常があってヘルニアになりやすい家系でした。

 症状が出て急性期病院に行ったけどいろんな理由で手術してもらえず、両下肢は完全麻痺に・・

 私が最初に見たときも左の膝が少し伸ばせるだけで他はほぼ完全麻痺。入院時から完全麻痺残存を視野に入れながらADLの改善、でもちょっとでも筋収縮が見られたらそこをPNFで強化・・毎日新しい発見をしながらリハビリテーションを進めて来ました。

 理学療法で2時間診療できるので、上半身の強化や脊髄損傷をお持ちの対象者用プログラムも同時進行で進めながら、賛否両論あるでしょうがYouTube
「ロフストランド杖でブレイクダンスを踊る対麻痺者画像」
を見せながら勇気づけ麻痺の回復にも全力で取り組んできました。

 リハビリテーションの成果かどうかはともかく、徐々に下肢の麻痺が改善してきて今日短下肢装具を使ってですが、松葉杖で一人で立ち、介助もまだ必要でしたが10m歩くことが出来ました。

 立てた瞬間「おお!やった!」と思っていたら、それを見ていた他の私が担当している方が涙ぐんで感動している姿を見て、私も思わず泣きそうになりました。

 こんな素晴らしい瞬間に立ち会える理学療法士という仕事は本当にやりがいのある仕事です。

 脳性麻痺のボバース8週間基礎講習会に参加したときに、治療実習で両下肢麻痺のお子さんが、生まれて初めて一人で歩けたときに感動してボロボロ泣いたのを思い出しました。

 理学療法士のプロとしてどうか?と言われそうですが「折れない心」を持って、潜在能力を信じて疑わずに、目の前の対象者(児)に今後も全身全霊で立ち向かい続けたいと思い直した今日の日でした。

 最後に・・週末ほとんど研修会や協会の仕事で家にいることが無く、デスクトップPCの前に座ることが無くなって来た今日この頃、ipadでフェイスブックとtwitterで情報発信をしていますがブログを書き続ける事は難しくなってきました。たまにPCの前に座れるときに履歴を見ると数百人の方がブログ見に来てくれていて、更新しないことを心苦しいなぁ・・と思い続けてきましたがこのココログは本日をもって書き込まないことに決めました。今後もフェイスブックで情報発信していきたいと思いますので「伊藤克浩」で検索、私のページをフィード購読して頂くことで近況をお伝えできますので今後とも応援の程よろしくお願いいたします。

 ※過去の発言で参考にしていただける事項もあると思われますので閉鎖せずにしばらくこのブログは置いておこうと思っています。

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2012年4月28日 (土)

「脳卒中後に手先、足先の回復が難しい(遅れる)理由」

FB(フェイスブック)の片麻痺をお持ちの方も参加している「リハビリ交流広場」に書かせて頂いたコメントをブログにもまとめておきます。

「脳卒中後に手先、足先の回復が難しい(遅れる)理由」

 専門家として考えられることを整理しておきます。脳からの信号は手先や足先の動きを受け持つ「皮質脊髄路」という経路と、体幹や股関節、肩甲骨周囲の動きを受け持ち「姿勢や歩行」そして「構え」を担当する「橋・延髄網様帯脊髄路」。そして、足に体重がかかったら即座に支えるための役割を持つ「前庭脊髄路」という大まかにいえば三つの役割分担があります。最初の皮質脊髄路は脳から出たら約90%が反対側の半身におりて行くので、この経路に関係する場所に脳卒中が起きると手先、足先の運動麻痺が著明に出ます。
 網様帯脊髄路は両方の脳からの信号を受けているので、片方の脳に何か障害が起きても、回復の可能性が残されていると考えられます。裏を返せば両側(麻痺していない側にも)影響を与える可能性もあります。これらの事から、立ったり歩いたりは回復の可能性が高く、早く回復するけど、手先の動きは回復が難しく、遅い…という事が考えられます。

 CIMT.BMI.認知神経リハ.Bobathコンセプトを含めた神経リハビリテーションでは手(麻痺側)から情報をいれることが重要であるとしています。これはNudo博士という方が研究で証明してサイエンスに掲載された論文が元になっています。この研究ではリスザルの麻痺した手から情報を入れ続けることで、使わないでいると他の機能に置き換わってしまう脳の地図が変わったという画期的な研究です。
 そしてCIMTとBobathコンセプトでは「半球間抑制」の考え方も治療理論に取り入れています。この理論について簡単に説明しますと、「脳は普段左右の半球が反対側の半球を暴走しないように抑制し合っていて、片方の半球になにか損傷が起こると、その抑制が働きにくくなって損傷されていない方の半球が過剰に働きます(麻痺していない方の手に力が入りすぎたり、粗雑になったりという事が起こる)。それと同時に損傷されていない半球から損傷された半球に送られていた抑制信号が増強され、損傷された...脳の回復を邪魔してしまう」という理論です。この理論の証明実験は損傷されていない半球にTMS(磁気刺激)を当てて過剰な働きを抑えたところ、損傷された脳の回復が起こり麻痺した手が動き出したという実験です。

 そこでセラピストはTMSを持ち歩くことができないのでCIMTでは一定の時間(約4時間、2週間)麻痺していない手を使わないことで損傷されていない半球の過剰な働きを抑え、Bobathコンセプトでは麻痺していない半身の過緊張を調整し、知覚的操作(粗雑でない正しい道具の使い方等)を再学習することで損傷されていない半球の過剰な働きを調整するという考えを持っています。ただCIMTでは麻痺した手の動きがある程度あって、このトレーニングを乗り切れる精神力(?)を持たれた方しかプログラム自体に参加できませんので、プログラムに参加できた人の回復率は高いということが証明されています。(誰でも麻痺していない手を使わなければ良いということではありません)

 麻痺した方の手にある程度動きがないのに麻痺していない方の手を使わないと日常生活が困難になるので難しいところです。いずれにしろ麻痺した方の手から情報をしっかり入れることは重要です。また、Bobathコンセプトでは麻痺した手の動きが使えるレベルになるかどうかに関係なく、肩甲骨や腕が姿勢調節やバランス、そして歩行に大きな影響を与えると考えていますので早期から麻痺した側の上肢へのアプローチを重要視しています。

 そして神経リハビリテーション全般に言えることですが、神経科学のみに理論が偏ると筋の生理学、心肺機能の事がおざなりにされやすいという心配もあります。「誤った歩き方を覚えると脳に良くないので早いうちは歩かない方が・・」と言っていると、麻痺した足の筋力は衰え、心肺機能は低下していってしまいます。難しい判断ですが適応を考えてリハビリテーションの進行を考え、その時期時期に合ったプログラムを実践することが重要だと考えています。

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2011年2月11日 (金)

日本理学療法士協会役員選挙

社)日本理学療法士協会役員選挙に立候補しました。

数少ない臨床実践者理事として現場の声を国政に届けます。

力を貸して下さい。

国のお金の都合で期間が来たらリハビリを受けられなくなることを本当に仕方がないと思っていますか?

「義を見てせざるは勇なきなり」

山梨県/理学療法士

http://blog.goo.ne.jp/beruo/

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2010年9月29日 (水)

神経科学の本

新刊「脳卒中の治療・実践神経リハビリテーション」
梶浦 一郎/鈴木 恒彦/紀伊 克昌 編著
市村出版
http://www.ichimura-pub.com/
3,600円+税

※(社)日本脳卒中協会理事長山口武典先生「出版に寄せて」、(社)日本脳卒中協
会事務局長中山博文先生「脳卒中地域リハビリテーション」他、病態からボバース概
念に基づいたハンドリングまで神経リハビリテーションにおける最新治療からリハビ
リテーションまで幅広く紹介。

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2010年3月15日 (月)

2010年 医療保険改訂

いよいよ今年も医療保険の改訂が出ましたね。片麻痺をお持ちの方に関係する部分を解説しておきます。

・まず、脳血管リハⅠという疾患別のリハビリ料が少し上がりました(235→245点)。対象者の方には負担が少し増えますが、リハビリを扱う施設としては「脳卒中に重点的に力を注ごう」という体制が期待できます。一方で外来の運動器リハが下がりました。

・発病180日の日数制限はそのままですが、月に13単位までは除外規定(失語や認知障害を有する)に該当する人でなくてもリハビリを受けられるという制度は、介護保険の短時間の通所リハビリの導入が今ひとつ進んでいないので、まだしばらく継続しそうです。

・回復期リハビリテーション病棟Ⅰの点数が上がりました(1690→1720点)。その代わり重傷の方を3割(今までは2割)受け入れることが義務となります。

・また、回復期リハビリテーション病棟には「休日リハビリテーション提供加算(新設60点)」という加算点数がついたので365日リハビリテーションをする施設が増えるでしょう。

・同時に「リハビリテーション充実加算(一日に平均6単位以上のリハを提供/新設40点)という加算もついたので、回復期リハビリテーション病棟を持っている施設はPT・OTを多く雇ってリハビリテーションを充実させようとするでしょう。

※量が多ければ良いとは思いませんが6単位(2時間)までは量が多いほど回復が良いというデーターもありますので少ないよりは良いと思っています。また、どれも対象者の方のご負担が増えることですので一概に良かったとは言えませんが、脳卒中リハビリの体制が充実する方向に向かうという意味では進歩であると評価もできます。

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2009年11月 6日 (金)

神経学に基づくリハビリの知識

最近Progress in Brain Reserch,Vol.143 CHAPTER 25 "Cortical and brainstem control of locomotion"Trevor Drew, Stephen Prentice and Benedicte Schepens から講義を持たせてもらいました。 Clinical Neuroscience Vol.27 特集Motor system-What's classic and what's new? の高草木先生の網様体脊髄路に関する最新知見も交えてCPGやリーチのニューロンネットワークに皮質がどう関わっているかという話をさせてもらいましたが、まとめていて自分自身にも勉強になる部分がたくさんありました。

 その一つが脳幹網様体は姿勢コントロールの筋緊張に関わる役割を果たしていることは周知の事実ですが、(主にPPN/脚橋被蓋核からの下行路)脳幹網様体は霊長類では6野(前運動野・補足運動野)からの入力を非常に多く受けます。すなわち随意運動との関係で言えば、例えば「あのコップを取ろう」と企図することが6野から運動野(4野)と脳幹網様体に信号を送り、運動野から皮質脊髄路を通じて手先を動かす命令が脊髄に行くのと同時進行的に、あるいは先行して脳幹網様体によって姿勢コントロールが準備されると言うことになるのです。

 このエビデンスからすると療法士が他動的に手をコップに誘導するだけでは姿勢コントロールに必要な情報にはならず、対象者がコップをよく見て「取ろう」と思うことが重要になるわけです。

 ちなみにこの脳幹網様体は青班核ニューロンからの伝達物質に影響を受けますが、青班核ニューロンは報酬に関わる事によく反応すると言われています。すなわち「うまくいった」とか、快適であるという結果につながることがまた姿勢コントロールに影響を与えるのです。

<解説>

 と難しいことを書きましたが、要するにどんな達人がリハビリしても脳卒中をもたれた方自身が「あれを取ろう!」と思って手を伸ばすリハビリをしないと脳は準備されないと言うことですね。そして「よしできた!」と思えるような場面でリハビリをする環境を作れることが重要です。隣の人と無駄話をしながらリハビリをする療法士さんは神経科学を無視していることになります。

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2009年2月27日 (金)

筋肉「透視」ソフト

ピーナッツMLからの引用
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筋肉「透視」ソフトを開発 東大
http://mainichi.jp/life/health/news/20090228k0000m040072000c.html
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片麻痺患者さんの運動分析に応用できると良いですね。

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2009年2月 4日 (水)

NHKスペシャル「闘うリハビリⅡ」

PT・OTネットより引用 http://www.pt-ot.net/

NHKスペシャル『闘うリハビリⅡ』 が放送されます。
昨年の第一弾は超急性期からのリハビリテーション、脳の可塑性など最先端のリハビリに焦点が当てられ話題になりましたが、リハビリ医療現場や患者(視聴者)からは「回復の可能性を否定され絶望した」「いったんリハビリを中断したら状態が極端に悪くなった。」「退院したらリハビリする場がない」など放送後に沢山の悲痛の叫びが多く寄せられた。
今回の第二弾の「闘うリハビリ」では回復の途上に立ちふさがる「壁」とは何か? リハビリ制度の問題、在院日数短縮を進める国の方針に回復の可能性があっても退院となり回復の機会を奪われてしまう患者、実際に患者の置かれている立場など当事者の目線で伝えていくとNHKは総力をあげて放送を決断。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090208.html

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2009年1月10日 (土)

固くしめられたペットボトルの蓋が麻痺手で開けられない

<課題をクリアする為に必要な運動学的・知覚的コンポーネント>(療法士の方へ)
 ペットボトルの蓋やビンの蓋を開けるときに必要な要素は、まず第一に蓋の中心に向かう力のモーメントではなく、回転力を生み出す方向へのモーメントとなります。その為、橈側優位に力ずくで蓋をつかむと指にアクセサリームーブメントが起きなくなります。アクセサリームーブメントというのは環境との接点で初めて起こる副運動のことで、例えば足の指を内回し、外回し(わかりやすいようにちょっと運動学的表現を無視します)って随意運動としてはできませんよね。
 でも足底が地面についていて重心を移動したり足部が動くとそういう運動が起こります。
 同様にペットボトルやビンの蓋に指をフィットさせ力を加えていくと指の皮膚や骨に結果的に回旋が起きますよね。徐々に接触面積を増やしていきながら回転方向への力のモーメントを増やしていくような知覚的操作を我々は自然に行っています。
 この動きを蓋の中心に向かう力のモーメントを力ずくで行うと麻痺側手指か非麻痺側手指かに関わらず「失敗」を生み出す要素になります。分析と練習のポイントはボトルの方を押さえている非麻痺側の手が麻痺手の加えた力に対応した反応になっているか?麻痺手が上記の知覚情報に対応した反応になっているかが重要です。介入の準備としては中手骨間の可動性と俗に言う「水かき」部分(指間)の皮膚の粘弾性、指の回旋の可動性を確保することになります。もちろんそれより中枢側の分析・準備も重要です。

<関連お役立ちグッズ>

ペットボトルの蓋を楽に開けることができますペットボトルオープナー
400 円 ワインショップアミ
ペットボトルの蓋を楽に開けることができます。手に柔らかい感触の軟質樹脂を使用。手がいたくなりません。 材質表示  本体/エラストマー樹脂(耐熱温度120℃) サイズ/約56×40(mm) 重 量/約34g□日本製□製... ...
http://sr10.choitoippuku.com/index30.htm
キッチン工房
http://www.kitchen-koubou.com/index.htm
最安値「楽天ショップ」
http://item.rakuten.co.jp/keirakuen/10001670/

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2008年12月30日 (火)

手のリハビリ用に役立つサイト

手のリハビリテーションに役立つと思われるサイトを紹介しておきます。OTさんどうぞ。

※ペーパークラフトはちょっとハードル高いかも知れません。

日本画家 佐藤和喜さんの大人の塗り絵http://homepage2.nifty.com/therapy/otstop.htm

※著作権の関係で「pleasant life」作業療法学生の部屋からお入り下さい。

YAMAHAのペーパークラフト
http://www.yamaha-motor.co.jp/entertainment/papercraft/

サンワサプライのペーパークラフト

http://paperm.jp/craft/index.html

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